0から45日で、月30万ドル(約4,500万円)。AI写真アプリ「Halo AI」を作ったディリオン・ヴァーマ(Dillion Verma)氏が、Xに投稿した売上のグラフです。
でも、このグラフが動き出す少し前、彼の銀行口座の残高はほぼゼロでした。18か月も失敗し続け、最後は約1,500万円を借りて、1つの動画の型に賭けたんです。動画で紹介した逆転のストーリーを、実際の画面とあわせてまとめます。
作ったのは、作るのが大好きなエンジニア
ディリオン氏は、カナダの大学でコンピューターサイエンスを学び、NVIDIAやShopifyでインターンを経験したエンジニア。ハッカソンにも20回以上参加してきました。
2022年の終わりに会社を辞め、自分のプロダクトづくりに専念します。作ったUIの部品集「Magic UI」は、GitHubで2万以上のスターを集める人気プロジェクトに。AIの利用ログを見える化するツールも、Vercelのアクセラレーターで優勝チームのひとつに選ばれました。
作っては失敗の18か月
ところが、一般の人向けのアプリでは、まったく勝てませんでした。共同創業者のグリション氏と2人で、いろんなアプリを作っては出す。でも、どれも当たらない。
開発者向けのツールと、一般の人向けのアプリは別のゲームです。一般向けでは、良いものを作る力より「届けて売る力」が勝負を分けます。18か月がたったころ、銀行口座の残高はほぼゼロになっていました。
最後の賭けで作った「Halo AI」
2025年の夏、Googleから新しい画像生成AI、通称「ナノバナナ」が登場します。「もう失うものはない」。2人はこのAIを使ったアプリを、わずか2〜3週間で作り上げました。それがHalo AIです。
写真を選んで、「こう変えて」と文章で頼むだけ。技術的にはそこまで難しいアプリではありません。でも、写真がガラッと変わる瞬間は、それだけで動画のつかみになります。機能そのものが、バズるネタになっていたわけです。

勝ちパターンは「ドッキリ動画」
2025年10月中旬にリリースしたものの、2週間たっても月の売上は250ドルほど。ここでディリオン氏が目をつけたのが、「ドッキリ」の動画でした。
たとえば、お父さんが大切にしている鯉を料理してしまった画像をAIで作り、その画像をお父さんに送って反応を見る。動画の流れは次のとおりです。
- 衝撃的な画像と強いひと言で、スクロールする指を止めさせる
- その画像をHalo AIで作る様子を見せる(ここでアプリのロゴが大きく映る)
- お父さんとのチャットのやり取りで、最後まで見させる
この鯉の動画は290万回、「お父さんの愛車を壊した」という同じ型の動画は340万回再生。日本向けのアカウントでも「エアコンが燃えた」というドッキリが320万回再生されています。宣伝っぽさはないのに、アプリの名前だけはしっかり残ります。
借金1,500万円で、動画の数を増やす
勝ちパターンを見つけたディリオン氏は、約1,500万円を借りて、動画を作ってくれるクリエイター集めにつぎ込みます。どの動画がバズるかは出してみるまで分からないので、打席に立つ回数を増やす作戦です。
- 集め方:掲示板やSNSのグループに募集を出すと、数週間で600人以上が応募。採用の前に5日間のお試し期間を設け、1本20ドルで毎日1本ずつ投稿してもらう。見るのは再生数ではなく、毎日投稿できるか、こまめに連絡できるか、つかみの効いた編集ができるか。
- 報酬の決め方:再生数に比例して払う方式と、1本20ドルの固定報酬に再生数の節目ごとのボーナスを足す方式を30人に見せたところ、29人が節目ボーナスを選んだ。
- 回し方:多いときは85人が4つのSNSに毎日投稿し、1日360本。Discordの中に、100万回以上再生された動画の文字起こしを覚えさせたAIのコーチを置き、ネタに困ったらAIに台本の案を聞けるようにした。1本が大バズりしたら全員に共有し、24時間以内にみんなで自分版を作る。
課金の導線:2段構えの課金画面
本人の説明では、課金画面は2段構えです。アプリを開いてすぐに出る1回目の課金画面は飛ばして中に入れ、流行りのテンプレートを眺めながら「こんなの作れるんだ」とワクワクしてもらう。そして使いたいテンプレートを選んで「試す」を押したところで、もう一度課金画面が出てきます。

もう選んで準備したあとなので、あと一歩で結果が見られる。この仕組みで、課金する人の割合は16.5%まで上がったそうです。料金も1年単位ではなく週単位。遊びのアプリは、長く使うつもりのない人が多いからです。
45日で月4,500万円へ
その結果が、冒頭のグラフです。本人の投稿によると、0から45日で月の売上は30万ドル(約4,500万円)を突破。有料の広告もインフルエンサーも使っていません。
※ 売上・再生数・クリエイターの人数などは、本人の発表(X・インタビュー)と公開記事によるもので、第三者による確認はしていません。円換算は1ドル=150円です。再生回数は動画を作った時点のものです。