「賢い人のための、TikTokの代わりを見つけた」。そんな一言をのせた短い動画が、TikTokで540万回再生されました。
宣伝しているのは、本の大事な考えを数分で読める「アイデア」にして届けるアプリ「Deepstash」。これまでの売上は推定で約16億円、配信中の広告は約6,000件で、広告を出すためだけに約13億円の資金まで受けています。動画で紹介した内容を、実際の画面とあわせてまとめます。
作ったのは、本だらけの家で育った起業家
作ったのは、ルーマニアのウラジミール・オアネ(Vladimir Oane)氏。共産主義の時代が終わるころに生まれ、首都から2時間ほどの小さな町で育ちました。お父さんは歴史の先生で、家は「本屋か図書館」のようだったそうです。
大学1年のとき、マイクロソフトにウイルス対策ソフトを売った起業家の講演を聞いて、「許可を取らずに、何かをしてもいい」というところに一番ひかれたといいます。
1社目は、リーマン・ショックの日にロンドンへ
次に作ったのが「uberVU」。最初は、会社が動画や記事を発信するためのツールでした。ところがアメリカの有名なブロガー、ロバート・スコーブル氏に「ほとんどの会社には、言うことなんてない。それより、客が何を言っているかを知りたいはずだ」と言われ、SNSで人々が何を言っているかを分析するツールに作り変えます。
ロンドンの起業支援プログラム「Seedcamp」に、約500社から5社のうちの1社として選ばれ、ロンドンで部屋を借りたその日にリーマン・ブラザーズが破綻。それでも資金を集めて会社を伸ばし、2014年、uberVUはSNS管理ツールの「Hootsuite」に買収されました。
「この業界が、もう好きじゃない」
売却のあと、Hootsuiteの幹部として3〜4年働くあいだに、SNSは変わっていきます。選挙をめぐる騒ぎや、議会で証言するザッカーバーグ氏を見て、「この業界が、もう好きじゃない」と思ったそうです。
本をペンを持って読むタイプの彼が、2019年にもう一度ゼロから始めたのがDeepstashです。2021年のインタビューでは「当分はお金を取らない」「広告は、うちのアプリとは相性が悪い」とまで話していました。それが今では、分析ツールの推定で、これまでに約16億円を売り上げています。
オンボーディング①:敵は「ドゥームスクロール」
最初の画面は、山積みの本と、スマホの「5分で読める要点」の比較。アカウントを作ると、まず「ここで一番やりたいことは?」と聞かれ、最初の選択肢は「SNSの時間を置き換えたい」です。
次は「SNSに時間を使いすぎて、生活に影響が出ていると感じますか?」。そして「ドゥームスクロールの代わりなら、Deepstashがいちばん」と、SNSとDeepstashで元気の度合いを比べるグラフまで出てきます。

使った人の声も「SNSから離れたくて、代わりにこのアプリを見つけた。役に立つインスタグラムみたい」。アプリの説明より先に、「SNSをだらだら見てしまう自分」を思い出させています。
オンボーディング②:本を、Tinderのようにスワイプ
続いて、本が1冊ずつ出てきます。『権力に翻弄されないための48の法則』『複利で伸びる1つの習慣』。気になれば「追加」、気にならなければ「スキップ」と、Tinderのように本を選んでいき、選んだ本はそのまま最初の読書リストになります。
次にアイデアを届ける時間と、興味のあるテーマを選ぶと「あなた専用の体験を作っています」。待っている間には「300万人以上のコミュニティ」「20万以上の要点」「Forbesなどで紹介」と次々に見せます。
課金画面:「2回タップで始められて、すぐやめられる」
課金画面の前に、まず「無料トライアルの流れ」。今日から使えて、5日目にお知らせ、7日目に課金が始まると見せ、「15秒で解約できる」とまで書いてあります。次に、ベルの絵と一緒に「無料期間が終わる2日前にお知らせします」。

課金画面は7日間無料つきの年額で、月あたりの金額に直して見せています。ボタンの上には「2回タップで始められて、すぐやめられる」。「すべてのプラン」を開くと、年額のほかに月額、そして「秋の特別価格」の年額まで並んでいます。いきなり安いプランを見せずに、開いた人にだけ割引を見せているわけです。
集客:「賢い人のためのTikTok」と、約6,000件の広告
540万回再生された公式の動画は「POV:賢くなりすぎている」。古い図解や数式のノートに、「賢い人のためのTikTokの代わりを見つけた」と重ねます。
Metaの広告ライブラリでは、配信中の広告が約6,000件(2026年10月23日時点)。クリエイターのアカウントから出している広告も並んでいます。ハロウィンには吸血鬼の本の要点をそろえるなど、季節の話題にも乗ります。
今では、有料会員の半分以上がアプリの外のウェブページから登録しているそうです。本人は最初「絶対にうまくいかないと思っていた」ものの、共同創業者の「もっと試そう」で続けたといいます。そして2025年、広告を出すための資金として900万ドル(約13億円)を受けました。
※ 累計の売上は、ポッドキャスト「two & a half gamers」で映されたSensor Towerの画面(Deepstash単体で約1,104万ドル)による第三者の推定です。広告の件数は、Metaの広告ライブラリで「Deepstash」と検索したときの配信中の広告の数です。900万ドルの資金はDealroomの記事(2025年10月)によります。再生回数は動画を作った時点のものです。